都市と地方の共創による持続可能な社会課題解決の実現

【企業名】富士通株式会社
【活動期間】2025年3月~
【共創先】暮らしの体験宿ひととき
福島県西会津町。人口減少や高齢化が進む中で、「でも、ここにはまだたくさんの原石が眠っている」と語る人たちがいます。
今回、その想いに共感した6名の富士通社員が集まり、地域と共に未来を描くプロボノ活動(経験やスキルを活かして取り組む社会貢献活動)が始まりました。
テーマは「都市と地方の共創による社会課題解決」。
肩書きや部署を越えて、ひとりの人間として地域に向き合う――
キックオフ:「都市と地方をかけ合わせたい」
キックオフミーティングでは、参加メンバーそれぞれが参加の動機を語りました。
「出身地である福島に恩返しをしたい」
「趣味や特技を地域との交流に生かしたい」
「都市が抱える課題を、農村の知恵で補完できるのでは」
多様な想いが重なり合い、プロボノチーム全体の厚みを形づくっていました。
一方、共創先である「暮らしの体験宿ひととき」を営む佐々木夫妻は、こんな言葉を寄せました。
「人口減少や高齢化が進んでいるけど、地域にはたくさんの原石が眠っている」
「都市と地方をかけ合わせて、未来を豊かにしていきたい」
富士通プロボノメンバーもこの想いに共感し、都市と地方による3か月の共創活動が本格的にスタートしました。
フィールドワークで見えた“西会津の力”
2025年5月、富士通プロボノメンバーは実際に西会津町を訪れ、
初日は直に地域住民の声を聴きながら、地域資源や地域課題の現状に触れました。
2日目は首都圏目線から見た西会津町を富士通プロボノメンバー間や、佐々木夫妻とディスカッションし、議論の中から「課題解決を一方的に目指すのではなく、都市と農村の双方向の視点を生かすこと。都市もまた課題を抱えている。だからこそ「相互補完」の関係性が生まれるのでは」――そんな気づきが芽生えていきました。


中間整理:2つの提案
同年6月のオンラインミーティングでは、これまでの学びを整理し、富士通プロボノメンバーから「暮らしの体験宿ひととき」に2つの方向性の提案がありました。
【2つの提案】
① 体験型OFF-JT (職場外訓練) によるサステナ人材(※)育成プラン
西会津を企業研修の場にし、自然と触れ合いながら都市の人材育成につなげる。
※サステナ人材…「サステナビリティ人材」の略語。持続可能な社会の実現に向けて必要な知識やスキルを持ち、環境・社会・経済のバランスを考えながら課題解決や価値創造に貢献できる人材のこと。
② 壁新聞を活用した潜在的魅力の可視化
都市の目で見た西会津の魅力を「壁新聞」に記録し、地域の人と共有する。
佐々木夫妻は、「どちらも想像を超えていてワクワクする。外から来た人から地域側に対し地域の魅力を伝えることが有効。外の人との対話の中で得られる気づきを可視化する仕組みが重要。」と語り、プロボノ活動への期待がさらに膨らみました。
成果報告会:「持続可能な都市×地方の共創」
当初、富士通プロボノメンバーと「暮らしの体験宿ひととき」による共創の枠組みで活動が始まりましたが、双方に共通して「都市と地方をかけ合わせて地域を豊かにしたい」との想いから、同年8月、西会津町役場にて地域住民を交えた報告会が開催されました。
まず、富士通プロボノメンバー(都市部)の目線から見た「都市部」と「西会津」の課題と魅力について発表があり、「暮らしの体験宿ひととき」に対し、それを踏まえた「都市の課題」と「西会津の魅力」を掛け合わせた2つの共創プランの提案がありました。
【都市×西会津 2つの共創プラン】
共創プラン①:体験型OFF-JT (職場外訓練)によるサステナ人材育成プラン
「わたしと地域で育てる未来〜西会津から始めるサステナビリティ〜」
首都圏企業向けに西会津町をフィールドとする研修プランを構築。
研修に参加してもらうことで、企業側はサステナビリティ人材やビジネス創出機会の創出が図られ、社員自身は
主体的にキャリアを描いた行動ができるようになり、西会津町側は首都圏人材に実際に町の魅力を体感してもらい、
地元では気付けない地域の魅力を再発見してもらう。
共創プラン②:壁新聞を活用した西会津の潜在的魅力の可視化
「あるもの探し~農村と都市の交流が未来をつくる~」
都市部が抱える課題、西会津町の魅力、今後の取り組みに関する構想等を記載した壁新聞を町内に掲示。
西会津を訪れた人たちが町での気づきや魅力を壁新聞に追加していくことで、地域側で町の魅力を可視化できる
ツールをつくる。
地域の方々からは「分析いただいた町の魅力や課題は関係人口や交流人口拡大に役立つ」、「首都圏の人に興味を持ってもらえるきっかけになればありがたい」といった声が寄せられました。


佐々木夫妻からは、
「西会津町としても富士通と繋がることが出来たことが、これから先1歩踏み出すための大事な機会となった。ハードルはあるが、草の根でできることから始めて、それが大きなムーブメントになっていくので、地域や日本の課題が解決できるよう、一緒に取り組んでいきたい。今度は私たちが富士通を伺い、皆さんからいただいた課題や質問を自分たちで揉んで、私たちの言葉でお伝えしたい。」との「地方側から都市部」へ想いを伝える場を求める声がありました。
そんな想いのもと、同年8月末にFujitsu Uvance Kawasaki Towerでの報告会が実現しました。
佐々木祐子さんは「『地域共創とは何か』を再考する機会となった。大きな成果を目指すのではなく、地域側ができることは『きっかけづくり』であり、小さな試みを重ね、地域外の人々が『面白い』と飛び込んで来られるような環境を用意し続けることが、地域の未来につながっていくという確信を得た。」と語りました。そのうえで「都市が地方を支援するのではなく、相互補完しながら共に社会課題を解決する関係づくりが重要。今後、地域と都市の協働による“共創”の時代を築いていくことが期待される。一緒に地域や日本の未来を考え、実践者になってほしい。」との富士通側への熱いメッセージが送られました。
また、富士通プロボノメンバーからは、「都市部」と「西会津」の課題と魅力、「暮らしの体験宿ひととき」に提案した「都市の課題」と「西会津の魅力」を掛け合わせた共創プランを振り返るとともに、「今回は提案で終わってしまったが、より長い期間をかけて地域と関係を築ければ、実践的な取り組みも可能となる。短期間の支援にとどまらず、伴走的な関わりを通じて地域とともに成果を生み出していきたい。」とコメントもあり、活動は一区切りを迎えつつも、未来へとつながる芽が確かに残されました。


おわりに
都市と地方をかけ合わせると、思ってもみなかった新しい関係性が生まれる。
今回のプロジェクトは、その可能性を強く実感する3か月でした。
これから先、誰かがまた西会津を訪れ、壁新聞に新しい言葉を重ねていく――。
そんな西会津町と都市の共創が続いていくことが期待されます。
▶参考リンク
暮らしの体験宿ひととき(福島県西会津町)
https://www.gh-hitotoki.com/
富士通株式会社(地域貢献活動)
https://www.fujitsu.com/jp/about/csr/community/society/
